本の話 - 向谷地生良「技法以前 べてるの家のつくりかた」


2009 医学書院
向谷地 生良 先生


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まずこのタイトルだけで
何の本だか分かる人は居るだろうか

分かった人は
その業界に居る方か
勉強している方か
そのような患者に携わってる方だろう


自分はタイトル・装幀からして
日本古来の建築方法(江戸時代?)を
探求してる人の本だと思っていた

実際は
精神障害者(統合失調症)を支援する
一人のソーシャルワーカーの
実践的自助活動の記録だ


普通は「あとがき」に書くべき部分を
先生は「はじめに」に謳ってしまっている

これが逆に良い

私のような業界知らずが
スンナリと入れる心地良いイントロ
想定していた暗さや悪いイメージも感じさせない

先生が意図して外して書いたか
実際にそのようなコトが無い環境なのかは
読んでみると後者であることがよく分かる

30年以上の実績に裏打ちされた
説得力が文章に良く出ている

そう
タイトルの意味
副題「私は何をしてこなかったか」
の意味がよく分かる


中は名言の連続だ
当事者はアスリートだ
「残念ながら百点満点」という立ち位置
「自分を助けること」を助ける
困っていればOK
サトラレはサトラセたい


多くの当事者が
「人間として自分にぶつかってきてくれた感覚」
「同じ人間だと実感できる現実感」が
回復を促す条件と口にしているそうだ

これは当事者(患者)だけではなく
すべての人間にも当てはまるだろう


最後の
無農薬リンゴ栽培に成功した木村秋則さんとの
異業種対談が面白い

リンゴ=患者
土=環境・場

とても異業種とは思えないリンクっぷりだ


まったくの異業種である人でも
この本から何かを感じ取れることが
出来るだろう


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はじめに
第1章 形から入れ
第2章 専門家に何ができるか
第3章 信じるということ
第4章 「聴かない」ことの力
第5章 人と問題を分ける
第6章 病識より問題意識
第7章 プライバシー 何が問題か
第8章 質より量の“非”援助論
終章 「脳」から「農」へ
鼎談 リンゴのストレングスモデル
文献
あとがき

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