本の話 - ヴィクトール・E・フランクル「夜と霧(新板)」

1956 原版 2002 新板
ヴィクトール・E・フランクル 先生
池田 香代子 先生翻訳

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当初の邦題「夜と霧」を残すか
それとも変えてしまうか
新訳者もそうとう悩んだと語っているが
そのまま「夜と霧」となった

原題の直訳は
「ある心理学者 強制収容所を体験する」

第二次世界大戦中における
ユダヤ人迫害の実体験
が克明に綴られている

この本の感想は
非常に書きづらかった

一般的に評されている
「言語を絶する感動」と言う表現は
自分にはまったく当てはまらなかった
からだ

「人間の素晴らしさ」
「人の尊厳」「尊さ」などが
一番近い感情
だろうか


心理学者ということもあり
強制収容から解放までの心境の変化が
(ありえないことに)とても客観的
淡々と書かれている

人として魂が死んでいく様を
ひたすら観察
している
内側からの「俯瞰」と言える


この本で
ドイツ人はヒドイ人種だ!
戦争は絶対にダメだ!
と言う感情は何故か湧いてこない

先生が
ドイツ軍親衛隊員・収容所監視員に対する
憎悪をあらわにしていないからだ
(憎悪を通り越して同情してる感さえある)


極限の状況に置かれた
人間の対応能力の凄さ
(心身ともに)自己防衛力の
肉体と精神の深いつながり

そして
(本当に)奇跡の連続で生き残り
この本を書き上げ
勇気を出して実名出版した先生に
ただだた頭が下がる思い

頭が下がると言う言葉が
適切かどうかわからないが
「尊敬」を超える感情を抱かさせてくれる

「いい人は帰ってこなかった」

奇跡的に生き残った人
そして自分自身への自戒の念
先生は客観的に評している

収容所から解放され生き残ったことが
本当に幸運だったのだろうか?


冒頭の章から察するに
収容所から解放された後も
魂は新しい収容所に収容されている
ように感じてしまう

最後に書かれているが
心理学者としての先生の決意・使命が
この本を実名出版させたのだろう

この本の出版
そして
いろいろな人間がこの本を読み
何かを感じる行為そのものが
先生の魂を(本当の意味での)解放される行為であるコトを
願わずにはいられない


そう…
明けない「夜」はない
晴れない「霧」もないのだから…

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この本を薦めてくれた方
とても感謝しております
ありがとう

コメント

  1. あまりにしっかり書かれた文章でスレとの格差にびっくりしてしまいましたw失礼

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  2. 素晴らしいお褒めのお言葉~
    ありがとうございます~
    どっちのジャミロウもホンモノですw

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