映画の話 - 幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ

1977 松竹
山田 洋次 監督
高倉 健 主演

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ぶっちゃけ
←「猿の惑星」レベルのジャケットネタバレ
なのだがどうしたものだろうw

数えきれないほどのテレビ放映や
誰もが知るストーリー展開
この映画を観るのは何度目になるのだろうか

本当の意味で鑑賞したのは
今回が初めて
かも知れない

蛇足になるが
物語は…

武田鉄矢演じる青年・欽也は
こっ酷い失恋を機に仕事を辞め
退職金でマツダの真っ赤なファミリア(4代目FRファミリア)を購入
北海道に傷心旅行へ出掛ける

同じ頃
桃井かおり演じるうら若き乙女・朱美も
彼氏のヒドイ裏切りに打ちのめされ
北海道に傷心旅行へ出掛けていった

北海道のとある街で若者二人は出会い
ひょんなことから高倉健兄さん演じる男・勇作と
同行することになるのだが…



オイラの記憶では
「たくさんの黄色いハンカチがはためくシーン」
これがラストシーンだと思っていた

(↑上記にあるジャケットのシーンだ)

今回
そのシーンの後にある
「本当の」ラストシーンに初めて気づかされた

それまで
この映画の主役はてっきり
高倉健兄さんだと思っていた

この映画の本当の主役は
武田鉄矢・桃井かおり演じる
若者二人だったコトに気付かされた
のだ


山田洋次監督はこの映画で
当時取り組んでいた
ドキュメント風ロードムービーを
発展・成熟させ
若い二人が成長していく青春ロードムービーに置き換え
当時性的に堕落し始めていた若者へのアンチテーゼを盛り込み
日本人らしい純愛復活の願いを厳かに宣言したと言える


珍しいことに
山田洋次監督にしては大自然を活かきっていない

あの北海道が舞台であるにもかかわらず

これは
人生経験が薄い若者二人を中心に据えたかったのか
当時流行りの音楽やカーグラフィック並のカメラアングルを散りばめ
北海道に居ながら都会的なノリの良さや
展開の速さを強調させたかったのかも知れない

主役は若者二人だが
高倉健兄さんの演技は
もちろん特筆すべき
だろう

特に
ラーメン屋で5年ぶりのビールにありつけるシーンなどは素晴らしく
こっちまで喉が鳴ってしまうほどだ
このシーンを撮るために2日間絶食したそうだ! 何という役者魂!)

ありえないことだが
あの健さんがギャグを言うシーンもある

この映画で高倉健兄さんは
任侠映画一辺倒役者から完全に脱皮
幅広く演じられることを証明したのだ

もちろんヒロインは倍賞千恵子であり
今作では健さんに負けないくらい不器用な女を演じている
これも新鮮だ

女心がわからない男
男心が分からない女

女心がわかる乙女
男心がわかる青年

この世代間を超えた対比が素晴らしい

今作が初映画出演となる武田鉄矢の演技や
現在のキャラクターとかけ離れた桃井かおりの演技も
もちろん見逃せない

寅さん・タコ社長・おばちゃん・統一劇場など…
山田組総登場でファンには堪らない


褒めまくりになってしまったが
一点だけ苦言を呈したい

高倉健兄さんが物語の中心になリ始めた途端
一気に説明調臭くなりテンポが悪化してしまうのだ

これが良くない

日本映画の中でも名作中の名作と言えるが
山田洋次監督作品の中でのランク付けで
(オイラが考える)最高位の作品とは言えない理由がそこにある

まぁそれを差し引いても
名作は名作だ

いつの間にか観ているこっちも
真っ赤なファミリアに同乗しており
彼らと一緒に北海道を満喫
してしまっている

さすが山田洋次監督

時代感に優れ
当時の日本の豊かさ
そして若さが溢れる映画
と言えよう

全日本人にオススメ

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DVD特典の山田洋次監督のインタビューを観て
初めてこの映画の本質を垣間見たような気がする

この特典映像は是非とも観ておくべき

特にラストシーンについて語っている部分は必見
(どうりで印象が薄かった訳だ)

この映画は
第1回日本アカデミー賞最優秀作品賞
第51回キネマ旬報ベスト・テン第1位など
同年の映画賞を総なめ

少々評価され過ぎのようにも感じる
素晴らしい映画には変わりない

この時代の山田洋次監督は
神がかっている
と言えよう

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実は山田監督は
この作品以上の更なる高みを実現させていた

「幸福の黄色いハンカチ」の
3年後に公開された民子三部作の第三作目
「遙かなる山の呼び声」

この日本映画の金字塔には言いたいことがたくさんあるが
また別の機会で触れたいと思う



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