本の話 - 増田俊也「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」

2011 新潮社
増田 俊也 先生

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帯にある通り
日本柔道史上「最強」の男の物語

著者である先生自身も柔道を嗜んでいるせいか
「木村政彦」への入れ込みようが尋常でない
それはある意味「神」を崇めているかのよう

しかしながら
それほどまでに入れ込んでしまう理由が
読み込んでいくうちに分かる


現在の日本には存在しないであろう
ホンモノの総合格闘家であり
漢の中の漢がこの日本に存在していたのだ

そしてそんな史上最強の男が
相撲あがりの格下(敢えて言わせてもらう)
力道山に敗れ去った


出だしに「木村政彦」自身の言葉がある

   僕の一番好きなことは「勝つ」といふことです。
一番嫌いなのは「負ける」ことです。


他にもエピソードがある

   練習中に投げられたわけではなく
   ただ膝を畳に着かされただけで悔しくて眠れず
   深夜、包丁を持ってその相手を刺し殺しに行き
   ぎりぎりで思いとどまった


   大試合の前日に短刀の切っ先を腹に当て
   実際に切腹の練習までして
   負ければ本当に腹を切るつもりだった

コレほどまでに
勝負にこだわり抜いた漢が居たであろうか…


その木村政彦が
視聴率100%とも言われた国民的大舞台で
一番嫌いだった「負ける」
を味わったのだ

そしてタイトルに戻る

「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」

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入れ込み過ぎて
エピソードがやや盛り過ぎ
ではあるが
それを差っ引いても極上のドキュメント本と断言できる!

文句なしに面白い!

初っ端のエピソードを読んだだけで
凄まじい本に出会った勝利を確信

そしてそんな漢の存在を知らなかった自分が悔しかった

とある格闘家の一生では言い足りない
日本の柔道…いや日本の格闘技
はてまた世界…いやいや
人類の格闘技の歴史も巻き込んだ
一大ノンフィクションドキュメント本だ!

物語の舞台が舞台だけに
戦中・戦後混乱期の時代背景
裏稼業の人間や在日朝鮮人
日本柔道界の闇
グレイシー一族や地下格闘技大会など…
その手のことが好きな人間には堪らない充実っぷり

プロレス・格闘技好き
柔道経験者だけでなく
すべての人におすすめしたい!

極上のノンフィクション本がここにある


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