本の話 - 桐野夏生「OUT(アウト)」

1998 講談社
桐野 夏生 先生

-------

湿り気を帯びた空気が
こっちにも伝わってくる


堕ちて(OUTして)いく人間たちを
これでもかこれでもかとエグり
恥も外聞もない剥き出しの欲望を
さらけ出させる


こんなはずじゃなかった…私が何故こんなハメに…
そんな現状からOUT(抜け出)したい
内なる叫びが聴こえてくる

女流作家の中でも先生は
空気感や心情の変化(特に負の部分)の描き方が上手い

繊細な描き方をする作家が多い中
先生はバリバリハードボイルドに描ききっている

良い意味で「目ざとい」と言うか
「抜け目ない」と言うか
恐ろしいほどの観察眼
なのだ

物語自体も
凄まじい展開の連続で飽きさせない

休ませてくれないと言えるほど
登場人物同様
こっちまでクッタクタになる

さらに
大方の読者が想像している展開の
2~3段階先を平気で用意
してくる

煽り文句で
「犯罪小説の到達点」「クライムノベルの金字塔」とあるが
あながち言い過ぎとは思えない作品


悲しいかな
最後の最後がちょっと頂けない

カッコつけたいのか
題名「OUT」に縛られ過ぎなのだ
個人的に最後の展開は正直いらなかった

もっと
清々しく?「OUT」してもらいたかったが
多くを求め過ぎだろうか


しかしながら
最後までの展開は「神の領域」
予想を遥かに上回るステージが用意され
大満足
させてくれる

こんなエグってくる作品は久しぶりだ!

しかも今作が
先生の3作目と言うから驚き
恐るべし女流作家

1998年第51回日本推理作家協会賞
エドガー賞最優秀作品賞最終候補にノミネート
も頷ける

最近退屈な小説ばかりで飽き飽きして
ちょっと「OUT」したい方にオススメ

--------

この作品を薦めてくれた人
ありがとう~

楽しめました


コメント