本の話 - 葉室麟「蜩ノ記」

2011 祥伝社
葉室 麟 先生

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いきなりで申し訳ないが
表紙の絵が頂けない

内容がなかなかの出来にもかかわらず
この表紙では評価を下げざる得ない
折角の主人公のイメージとは程遠い絵

文中に「40過ぎのうんぬん」
と明記されているにもかかわらず
この表紙の男はどうだ?
若い武士ではないか!

しかも
部屋に散らばる書物の山々が見当たらない!
これではまったくダメ

あの重厚な武士の
真っ直ぐで頑な信念
あの実直な重みが半減されてしまう

文庫本化の際に
改善されていることを祈ろう



内容は
とある村に若い武士が向かっている

彼は自分の犯したミスを帳消しにするため
ある密命を藩から命ぜられる

とある男を見張る役目だ

何を隠そうその男は
3年後に切腹しなくてはならない男であった


如何にもな武士の生き様モノであるが
謎解き要素や一途な愛も含んでおり
飽きることなく読み進めることが出来る

やや広げすぎで回収しきれずに
ボヤけて終わってしまう
ところが惜しい

もっとシンプルで不器用なくらいの方が
深みがより増した気がしないでもない


文句なしで直木賞作品だ!
と素直に思えない作品
ではあるが
こういうのもなかなか良いね
ってのが正直な感想だ

第146回(平成23年度下半期)直木賞受賞作


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